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『更紗: 美しいテキスタイルデザインとその染色技法』
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工芸ライターの田中敦子さんの『更紗 美しいテキスタイルデザインとその染色技法』が出版されました。
インド更紗をはじめ、シャム、ペルシャ、ジャワ、ヨーロッパ、 そして日本の和更紗といった、 貴重な更紗が百点以上も掲載されているばかりでなく、 現代のインドに受け継がれている更紗技法から(なんと、 インドでも取材!)、ジャワ更紗、 和更紗の技法も目で見て、学ぶことができます。
本著は、渞忠之さんによる美しい写真が心地よく配され、全く 見飽きることがありません。
一枚、また一枚とページを繰っていくと、こんなに多様で美しい更紗があるのか、と楽しい発見の連続です。
副題に「美しいテキスタイルデザイン」とあるように、 世界中の更紗の文様デザインとともに木版図版まで収録されたこの 本は、更紗が好きな人や染織に携わる人だけではなく、 デザインに関わる人たちにも向けて出版されたものです。でも、 ページから聞こえる著者の声は、日本のものづくり、 特に若い工芸作家に向けて、「 もっと古き美しい仕事に学んでほしい」 と訴えているように感じました。
現代のインドの職人を取材して、 その仕事を通して更紗の技法を見せるページ—— とても貴重なページのあとに、「プロセスで知る更紗の技法」 が置かれています。そのプロセスを見せてくれたのは「 更紗の古法を学び伝える日本の若き作り手たち」。 インド更紗を吉岡更紗さんが、ジャワ更紗を渡辺智子さんが、 和更紗を中野史朗さんが担当しています。 いずれも古き美しき職人の仕事に学び、 ご自分の創作の糧とされている方たちです。
名前も伝わらない職人たちの更紗を、 深い敬意でもって採り上げた一冊です。『江戸の手わざ』『 もののみごと』『インドの更紗手帖』の著者であり、 長年にわたって職人の仕事に光を当てつづけてきた田中敦子さんだ からこそ、生まれた本だと思いました。
この本、そして前著の『インドの更紗手帖』の撮影にあたり、京都と東京で微力ながら、お手伝いをいたしました。本物を実際にみて、触れる、貴重な機会を賜ったことが、私の仕事のなかで、今後の糧になることは疑いようがありません。
ぜひ、多くの皆様に、この本を手にとって頂きたく存じます。
『更紗: 美しいテキスタイルデザインとその染色技法』
田中 敦子 著
2015/1
誠文堂新光社