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昨日は、二兎社『書く女』@世田谷パブリックシアター、初日のお芝居を観劇しました。
短い生涯のなかで、物書きとして上り詰めた樋口一葉の生涯を描いた本作品は、2006年寺島しのぶ主演で初演された際に、演劇賞をさらった人気作。
ピアノ生演奏のLive感と共に、丁寧に作り込まれた正統派のお芝居に引きずり込まれ、あっという間の3時間。主演は、超実力派女優として人気を博す、黒木華さん。
樋口一葉は、もう彼女しか考えられない、と思うほどにぴたりとはまり、物書きを志す萩の舎時代の初々しさから、若くして病に倒れる晩年の凄みまでを、見事に演じ分けられていて、ひどく舞台が小さく感じられるほどに、魅力とエネルギーに溢れていました。
お芝居の衣装は、一葉が生きた明治の装い。
明治の装いといえば、まっさきにイメージするのは、凝った刺繍衿をたっぷりと出した華やかさ。女学生や活動家は、ブーツに袴で闊歩した時代でもありました。
しかし、士族の生まれながら、生活の困窮に苦しんだ一葉は、終始、縞のきものに、地味な色合いの昼夜帯。妹くにと共に、晴れ着を質に入れるシーンが繰り返し登場します。そして、その鬱憤を晴らすかのように、一葉の小説のなかには、吉原近くの市井の風俗を取り入れた、リアルで活き活きとした装いの美しい人々が数多く登場するのです。
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そんな一葉の時代のきもの、さらに、「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」など、一葉の描いた小説のなかに登場する女たちのきものについて、とてもよく描かれているのが、『一葉のきもの』。実際の写真や、鏑木清方や水野年方の画を交えて、この時代の生活風俗を紐解きながら、明治時代のきものについて、非常に理解の深まる一冊となっています。
『一葉のきもの』
近藤富枝・森まゆみ著
2005.9
河出書房新社