『夜の蝶』のモデルにもなったといわれる、伝説の銀座マダム、「おそめ」のめくるめく半生を描いた、一冊。
作品の冒頭で、書き手が、晩年のおそめさんに出会うシーンが好きだ。初めて、その人に会った瞬間を描く筆致は、すこぶる鮮やかで、読む者の心をとらえて離さない。
その柔らかなきもの姿、そして、その透明な佇まい。
美しく、臈たけた、その老女の姿は、きもの好きの心を大いにくすぐる。
一度でいいから、私もお目にかかってみたかった。
『おそめ-伝説の銀座マダム-』
石井妙子
新潮文庫
2009年3月